国語の時間暴走編(文章の練習なのでテキスト中心)

こんにちは。

私は気づいてしまいました。

何にって、決まっているでしょう。

文章上手くなるためにブログを始めたのに全然ちゃんと文を書いていない

という事実に気づいてしまったということです。

今まで私が書いてきたものといえば、

 

 

solosalt2.hatenablog.com

 

コウメ太夫も引くくらいくだらないプレゼンをしたり、

 

solosalt2.hatenablog.com

 

はかせがたけしに口説かれるだけだったり、

 

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身にならないライフハックもどきを書いたり、

 

solosalt2.hatenablog.com

 

極めつけは怪しげな広告(クリックしたくなる)のようなタイトル。

 

このままでは駄目だ。

実際「地の文」の下手さにいつも悩まされているじゃないか。

どうにかして文章を書かなければ。

ただ、文章だけで物事を説明するって思っている以上に難しいのです。

しかも特筆すべき事柄が身の回りで起こっていないときたものですから

私、頭をひねりました。何か「日記」に書くことはないかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在国語の授業で「初恋」という島崎藤村の詩を勉強している。

まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛の
花ある君と思ひけり


やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり


わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな


林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

 

初恋 島崎藤村(詳しくはこちらを)

 

授業は何時間かに分けて行われる。

一時間目は「各連の内容をまとめよう」という学習内容だった。

ちなみに「連」というのは文のひとかたまりのことである。

この詩は四連からなるストーリー性のある詩(らしい)であり、

人気があ(るらしく)、先生も好きな人が多い(らしい)。

正直私は名作文学をあまり読まないので分からないというのが

率直な感想だった。

最近読んだ本と言えば美少女とイチャイチャしたり、

十ページに一人のペースで人が死ぬ話くらいなので

ポテチを食べていたらそれが乳酸菌入りのような気分だった。

(注:文章が下手な人は例えも下手)

 そうして、私が国語用ノートにラップを刻んでいるうちに先生の話は

進んでいった。

 

先生が言った。

「四人班で各連にどのようなストーリーが隠されているのか、調べてみましょう」

その喋り方は私にEテレの教育番組を思い出させた。

四人班の構成はこうだった。

 

  • 私(国語でしか点数を稼げないのに最近国語で点数が取れない)
  • 読モという噂のめちゃくちゃ可愛い子(可愛くて優しい)
  • メガネ(メガネ)
  • 人気者(ハイセンスな笑いでクラスを支える。声が良い)

私は切り出した。

「たぶん、第一連は出会いだよね」

話を円滑に進めるために基本の確認をしたつもりだった。

しかし人気者は「は?」と言った。

「なんで櫛を前から刺すんだよ・・・意味わかんねえよ・・・」と続けた。

 

前にさしたる花櫛の

 

もし私が賢かったら「違う」と言えたかもしれない。

ただ私はそこまで頭がいいわけではない。

だから「ああ、この表現は確かに前から刺してる」と思ってしまった。

f:id:solosalt2:20171221020506p:plain

 

こうだと思ってしまった。

でも島崎藤村が「初恋」という詩の最初から傷害事件を起こすような

そんなハイレベルすぎる笑いをとってくるとは思えなかった。

きっと「前にさしたる」には違う意味が込められているはずだ。

私はメガネに目を向けた。

メガネは頭がいいと相場が決まっているから、きっと彼なら

ダンガンでロンをパンしてくれると思った。

頼む、君だけが頼りだメガネ―――――――――-

 

「なるほどな。櫛を刺すのか、痛そうだな」

 

駄目だった。しかもプラスアルファで「痛そう」って言っちゃった。

 

 

話題は第二連にうつった。

 

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅の秋の実に
人こひ初めしはじめなり

 

「恋だね」

「恋よ」

「恋だ」

 

私以外の三人はそう言ったきり黙ってしまった。

私もそれ以外思いつかなかった。

しかしこの静寂が後に私の破滅を招くこととなったのである。

 

 

 

第二連がむにゃむにゃしたまま第三連の話になった。

 

わがこゝろなきためいきの
その髪の毛にかゝるとき
たのしき恋の盃を
君が情に酌みしかな

 

「ハイハイハイ!!!」と人気者が大きな良い声で言った。

そうしてしばらくの間を空け、彼は自らの解釈をまくし立てた。

 

 

 

「これは、主人公、ああ主人公は男だと思うんだけどね、そいつが浮気するんだ。

お酒の勢いでね。お酒の勢いで。お酒の勢いで違う女の人と寝ちゃって、

それが最初は恐る恐るだったんだけどだんだんそれはスリルへと変わっていくんだよ。

バレたらどうしようの気持ちが浮気の良いスパイスってことね。

で、それは彼女にもバレてるの。でも彼女はそれを言わない。

お酒に酔った主人公の相手をしてあげているんだけど、その瞳には

悲しさが宿っているんだ。え、俺完璧じゃね?」

 

 

 

これが人気者の本気か、と思った。第一連も第二連も村人みたいな顔して

第三連でいきなり人気投票上位のサブキャラになった感じがした。

ただ、そんな内容の詩が教科書に載るとは考えにくいし

もし載るとしても第三連だけ(中略)ってなると思う。

私のそんな葛藤に関係なく班の会議は進んでいった。

ちなみに読モっぽい子もメガネも「ふうむ、興味深い」みたいな

顔をしていた。私の味方はいなかった。

 

 

 

第四連になった。

 

林檎畑の樹の下に
おのづからなる細道は
誰が踏みそめしかたみぞと
問ひたまふこそこひしけれ

 

人気者が俺のターンとばかりに話し始めた。

 

「これはアレだ、結局浮気してリンゴの木の下で別れを告げられるんだ」

 

「で?」

 

「それで、苦く酸っぱい初恋が終わるんだ」

 

良い感じにしめた。第三連に比べるとてきとうさが隠しきれていないが、

やはりそんな内容の詩なら教科書に載らないだろうと思った。

 

 

 

 

班会議の時間が終わった。

 先生は明るい笑顔で言った。

「じゃ、発表してもらいますから」

 

聞いてない。しかも振り向くと人気者が

「まあ発表はお前だろ、頭良さそうだし」

と私に言ってきた。

頭良さそうという理由で人を選ぶなら絶対隣の席のメガネが順当じゃないか。

しかも私が言うのか。あの昼ドラの第七話あたりっぽい話を。

「がんばれよお~」

と言われた。悪意が見えた。

 

私たちの班は七班だった。一班から順番に班の代表者が発表していくという

流れの中で数々の珍解答が続出し、クラス内の雰囲気は温かくなっていた。

私の番が来た。

ここで言っておくと、私は人前で喋るのが苦手で授業中の発表にも

非常に消極的である。また、別に面白いキャラでもなく、言うなれば

「クラスの隅にいる図書委員」くらいの立ち位置だった。さらに、

色恋沙汰に巻き込まれたことがなく、むしろ中学生のそのような

空気感が大嫌いだ。

そんな私がこんなメロドラマみたいなことを発表するなんて不可能だ。

救いを求めて後ろを振り返ると、人気者が

「俺が言ったことそのまま言えば良いから安心しな!」

と言ってきた。

お前が言ったことをそのまま言うことが嫌だから不安だというのに。

 

 

「あ、ええと・・・

まず第一連で出会います。リンゴの木の下で花櫛を前から刺した系の女の子と主人公が出会うってことです。その子が持っているリンゴがその子に似ていて、あれ?いや、その子がリンゴに似ていて印象的だなってかんじです。第二連ではあのお、その、つまり、ええと(私は「恋」という言葉を言うのが恥ずかしい年頃だった)つまり第二連では、その子が、めっちゃ輝いてるやん、みたいな。はじめてのきもちが主人公に芽生えて輝いてるやん、みたいな。で第三連ではこれは、主人公、ああ主人公は男という前提なんですけど、そいつが浮気します!お酒の勢いで、お酒の勢いで違う女の人と(ごにょごにょ)あの、関係?そういう、関係を持つ、みたいなかんじで、それが最初は恐る恐るだったのにだんだんスリルへと変わっていって、ああ、バレたらどうしようの気持ちが浮気の良いスパイス~スパイスですよ~みたいな。彼女にもバレているにも関わらず、彼女はそれを言わないでお酒に酔った主人公の相手をしてあげているんですけど、その瞳には悲しさが宿っているんです。で、第四連で別れます」

 

 

 

 

 

 

 

 

終わった。教室には先生の苦笑いが響いた。

振り返ると人気者が満足げにうなずいていた。

私は再び下を向いてラップを刻み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに、国語の先生が授業の終わりに言う

「もう、終わりにしましょう?」

というのが別れを切り出す女性っぽいなといつも思っています。

長々と書いてしまいすみませんでした。ありがとうございました。